札幌高等裁判所 昭和63年(ネ)314号 判決
(抄録)
「一 当裁判所もまた、Xの本訴請求は失当であって棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり付加訂正するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。
『一 請求原因1、2の各事実(本件当事者等及び本件リース契約一の成立)は当事者間に争いがない。
請求原因3の事実(本件リース契約二の成立)は、<証拠>を総合すれば、これをみとめることができる。
二 そこで、進んで請求原因4について判断する。
1 前記一の当事者間に争いのない事実及び認定事実によれば、本件リース契約一と本件リース契約二とは、ほぼ時期を同じくして連続して締結され、その内容がほとんど同一であることが認められ、また<証拠>に前記一の当事者間に争いのない事実を総合すれば、Yは、Mとの間で、本件リース契約一を締結した時、Yはそのリース料支払いのためY振出の約束手形五九枚をMに一括交付し、Xは、昭和五七年六月二九日、本件リース物件のリース方を求めたMの申込を承諾し、Mから本件リース物件を五九七万円で購入したうえ、Mとの間において本件リース契約二を締結し、Mは本件リース契約二のリース料支払のために右約束手形五九枚をその後Xに対して裏書交付したことが認められ、さらに<証拠>によれば、昭和五七年七月から昭和五八年一一月までの一七か月にわたり右手形は決済され、昭和五八年一二月から昭和五九年四月までは現金で、昭和五九年四月以降はY名義の口座から振替の方法でそれぞれ約定どおりのリース料が支払われていたことが認められる。
2 しかしながら、他方、<証拠>を総合すれば、次の事実も認められる。
(一) Xは、Mとの間で業務提携契約を交わしており、Mの販売物件につきおよそ総額一〇億円くらいのリース取引を行っていた。本件リース契約一と本件リース契約二は一連のリース取引であって、取引類型としては、リースバック・アンド・転リースと言われるものである。
(二) Yは、Mの関連会社のEの斡旋により、Mとの間で、昭和五七年六月二五日、その商品である本件リース物件についてリース契約(本件リース契約一)を締結した。リース料は最初の一年間は、Eで負担するとの合意によりEにおいて支払いがなされ、その後後記認定のとおり昭和五八年六月ころYが本件リース物件をMに返還した際にMの意を受けたEから、Yに対しY振出の前記約束手形はXに裏書ずみであるので返還できないが、その決済はEが担当するとの申出がされ、Yがその申出を了承して、そののちは、M又はEにおいて支払いを続けた。その間、Y名義の口座が開かれ、そこから振替によりリース料が支払われているが、右口座の開設、リース料の支払いにYは関与していなかった。
(三) また、本件リース契約一の締結の際には、本件リース物件につきXとMがリース契約を締結することが予定され、Yもそれを承知していたが、その際、XとYとの間で、Mを排し、本件リース物件につき直接のリース契約を締結する旨の話は交わされていなかった。
(四) 本件リース契約二の契約書においては、物件設置場所としてYの肩書住所地とYの表示がされ、特約欄に本リース契約はYへの転リースである旨の記載がありながら、ユーザー側のMの連帯保証人欄にMの代表取締役であるSの署名捺印がされているほかには、連帯保証欄は空欄のまま残され、Yはその契約書のどこにも記名押印を求められたことがなかった。
以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。右2(一)によると、X・M間、M・Y間の各リース契約は、いわゆるリースバック・アンド・転リース取引と認められるところ、このような取引においては、通常本件リース物件の売買契約は、リースバック契約と不可分一体に結びついたもので、当事者の意図はXのMに対する売買代金相当額の融資を実行することにあり、リースバック契約のリース料はその回収であり、XがMのYに対するリース契約(本件リース契約一)上の地位(Xはこれを「賃貸人の地位」という。)を取得することを目的として売買契約を締結したものではないと推認される。また、右2の各認定事実によれば、右売買契約当時は、XはエンドユーザーであるYではなく、サプライヤーたるMに信用をおいて取引していたこと、現実に本件リース契約一についてリース料の授受は全くされなかったのに対し、本件リース契約二に係るリース料は相当の長期間にわたり支払がされたことが認められる。これらの点を併せて勘案すれば、右1の各認定事実により請求原因4の事実(Xが本件リース物件を本件リース契約一のユーザー付のまま買い受け「賃貸人」の地位を取得したとの主張等)を推認することはできず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。
三 請求原因4が認められないとすると、請求原因5(転貸借類似の関係)は当事者間に争いがない。
四 よって、抗弁について判断するに、<証拠>によれば、Yは、本件リース契約一を締結して約一年ほどたった昭和五八年六月ころ、Mとの間で、本件リース契約一を合意解除し、本件リース物件をMに引き渡したことが認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
五 そこで、さらに再抗弁について判断するに、前記二、三に認定した事実によれば、XとYと間には、Mを挟んで転貸借類似の法律関係が認められるところ、YとMが本件リース契約一を合意解除してもXのMに対する本件リース契約二に基づくリース料支払請求権に何らの影響も及ぼさないことは明らかである。また民法六一三条二項に基づく直接請求権は、原賃貸人に賃貸目的物を現実に用益する転借人に対する請求権を認めることによって原賃貸人の地位を保護しようとするものではあるが、所詮直接契約関係にない者の間に特に法定された権利にすぎず、契約当事者間において特約をもってしかなしえない契約終了の制限の如きにその効果が及ぶ謂れはなく、転貸借関係を終了させるにつき、転貸借当事者を拘束するものではないと解すべきである。リース会社として融資をする立場にあり、リース契約の法律関係の選択をしうるXが、Mを連帯保証人としYとの間で直接のリース契約を締結する途を選ばず、また、Yに本件リース契約二のMの債務を連帯保証させることなく、あえてYと直接契約関係にたたないリースバック・アンド・転リースの方法を選択したのであるから、Xは、その故に不利益を被る事態があっても、その結果を甘受すべきものであって、その不利益をYに転嫁することはできないものといわなければならない。してみると、Yが本件リース物件をXが所有していることや本件リース契約二が締結されていることを知っていたとしても、YとM間で本件リース契約一を合意解除することがXに対する関係で信義則に反するものと認めることはできない。よって、X主張の再抗弁は採用できない。』
二 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却する……。」